志望動機について

先ほど、志望動機についてご相談を受けました。どういう志望動機を言えば、採用サイドに評価してもらえるのかというご質問です。例え同業を受ける場合でも、各社ごとに戦略が違う以上、各社への志望動機は当然変わってきます。志望動機を練るには各社の戦略を理解する必要があります。


しかし各社の戦略を理解していた積りでも伝え方によって地雷を踏むこともあります。


例えばこんな話があります。とある方がプライベートエクイティーファンドD社で志望動機を聞かれ、「ハンズオンで投資先の経営に関わりたい」と答えたところ、「ファンドは投資家のお金を増やすことが目的。経営をすることが目的ではない。経営が目的なら事業会社に就職して経営に携われるポジションについたほうがいい」と言われました。その方はその体験を活かし、別のPEファンドY社で志望動機を聞かれた際に「ファンドは金融業なので、安く買って高く売るほうが良いと思う。良い会社を安く買って貢献したい。」と答えたところ、「良い会社は安く売っていない。良い会社のバリューを適切に見極め、そしてハンズオンでさらに企業価値を上げるお手伝いをすることに当社の付加価値がある」と反論を受けてしまいました。


どちらの会社も、「良い会社に投資をして企業のバリューアップを行い、結果として投資家にリターンをお返しする」という事業の目的は変わらないはずなのに、反応が違ったようにその方には見えました。結局どうしたらよかったのか。卒のない回答をしたかったのであれば、バランスよく両方の話をすればよかったのではないかということになります。極端な話をしてしまうと相手は反論したい気分となり、地雷を踏む可能性が高くなります。もちろん卒のない回答はインパクトに欠けることも多いですから、痛し痒しです。


しかし、ここで志望動機を伝えることの意味についてもう一度良く考えてみる必要があります。志望動機とは自分の出来ることと自分のやりたいことを結びつける重要な説明ではありますが、評価とは面接全体を通して行われるものなので、志望動機だけで評価が決まることはありません。


面接官は、面接を通して、一緒に働いたときにどのような働きをするかというイメージを持とうとします。そのために色々な質問をします。志望動機と今までの実績に矛盾がなく、ストーリーに無理がなければ、長く活き活きと働いてくれるのではないかと感じます。その納得感を相手に与えられるかが重要です。


先ほどの例で言いますと、志望動機を伝える前の段階−例えば第一印象や自己紹介の仕方、今までの仕事のやり方など−で、自分たちの会社で働くイメージがつかないと感じていたのかもしれません。「当社で働くことは貴方にとって幸せではないかもしれない」という説明の場所を探していて、それがたまたま志望動機への反論という形で出てきたのではないかとも考えられるのです。


いずれにせよ、作りすぎた志望動機が原因でNGになってしまうと、後悔も大きいものです。どうせなら本心を伝えた結果としてダメだったほうがすっきりするのではないかと、個人的には思います。


後悔しない面接のためにも、面接を受ける際に大事だと思うことは
・会社研究を行う、事前情報をなるべく集める
・相手に理解してもらいたいという気持ちと、相手を理解したいという気持ちの両方をバランスよく持って望む
・本心とは違う説明をしない(誤解されたまま入社しても幸福にはならない、ただし表現方法は工夫をする)
・仮に上手く行かなかったとしても、ご縁ものだと気軽に考える(面接が通るかどうかはポジションの空き具合によるので必ずしも実力とは限らない、などと割り切り、過度に自信を消失させない)
そんなところだろうと思います。