年収が高いポジションの理由を考える

金融の世界では「外資系」ということばに惹かれる人は多くいます。金融はもともと欧米で発達したものであり、まだ現段階では日系よりも欧米系のほうが最先端を走っているということも人気が高い理由ですが、年収がものすごく高いということにも、人気の理由があります。


どうしたら、青天井で年収が高くなるのでしょうか。至極簡単なことで、「高い労働分配率の会社で、高い収益を上げること」。簡単に言えばその人の力に殆どを依存した収益であれば、会社は高い給料を払っても惜しくはないわけです。


しかし、上がった収益が誰の力によるものか、ということは難しい問題です。大企業は看板があるから、突然の営業電話をしても偉い人とアポイントが入りやすいのでしょうし、少々的外れな話だったとしてもお客さんも付き合ってくれるのでしょう。しかし、知名度のない会社は違います。よほどお客さんに利益をもたらさない限り、知名度の低い会社と付き合おうとする人はいません。大企業だからこそ力を発揮できる方を、私は勝手に「インフラ依存度が高い方」と呼んでいますが、そういう方が「年収が低い」という不満を持って、知名度の落ちる会社(たいていの場合は労働分配率が高い会社)で年収アップを狙ったとしても、うまくいくとは限りません(もちろんうまくいく人もいます)。自分の出してきた結果がインフラに依存したものなのか、個人の能力によるものなのか。なかなか切り分けられないので、この判定はとても難しいのです。結局、インフラが不十分な会社で採用する側とすれば、インフラが不十分な組織で若いときからもまれてきた人を採用する方が確率が高いということになります。ある程度の年齢になると、インフラの充実している日系の方をインフラが不十分な外資系の採用担当者が採用したがらなくなる理由のひとつがこれです。


したがって、高収入を得るという人生の目標がある方は、早い段階から、もまれる世界に入ったほうがいいと思います。でも良く考えれば、ものすごく高い年収ということは、相当高い能力の人が、長い年月をかけて自分を磨いた上で、激烈なる競争を勝ち抜いて得られるものであります。そして、その世界を小さいころから目指して努力してきた人が多いと言えます。青年期から修正を試みても不可能なこともあります。それだけ年収が高い世界は、厳しさはプロスポーツの世界と同じです。プロ野球にたとえて言うならば、三十歳を過ぎてトレーニングを始めた人がポテンシャルを買ってほしい、松井や松坂になれるかもしれないと主張しメジャーリーグに挑戦しても、認められることは限りなくゼロに近いと考えるのが妥当なのと同じことです。


最近は今までの努力の蓄積なく、年収アップにフォーカスする方が多いことが少々心配になり、ひとこと。これだけ労働市場流動性が高まった今日、年収もマーケットで決まりますので、とてもうまく出来ているものです。高いには高いなりの、低いには低いなりの理由があります。希少性の高いスキルを持った人や収益をあげられる人は、高い年収になりましょうが、そうでなければマーケットと比較して、何倍も(とまでいかなくても何十パーセントも)年収が高いことはありません。たとえ、そういう案件があったとしても、何か裏があると思ったほうがいいと思います。短期的に年収をあげるだけに目的があればそれでもいいですが。


そしてもうひとつ重要なこと。高い年収を維持し続けるということは相当な能力と労力が必要です。生涯年収と言う概念で考えるならば、単年度の高い年収はあまり意味を持たないということも考えた上で選択をしたほうがいいと思います。