証券化できないローン

来年から新卒が入社するので、新卒の人に成長の実感を持ってもらうために、「この仕事が出来たらレベル1をクリア、次はレベル2の仕事を・・・」というような、自己評価に役立つベンチマーク 兼 評価体系を作ろうと思い、昨日から手がけ始めたのですが、早くもドツボにはまっています。自分たちの仕事を可視化しようとすると異常に膨大かつ複雑なワークフローになり、人間とは複雑なことを処理できる高度な能力を持っているものだと、我ながら感心してしまいます。


評価の話で思い出しましたが、先日、某外資系証券会社のディレクターから「日系大手銀行がノンリコースローンを積極的に証券化しない理由は行内の評価体系にある」との話を聞きました。某日系大手銀行の不動産ファイナンス部の評価対象は「アップフロントティーの額」とのこと。すなわち貸し出してから回収するまでトータルの収益額から信用リスク料を引いたネット収益ではなく、ノンリコースローンを実行したときに借り手から最初に貰う手数料(=アップフロントティー)を多く獲得した人が評価が高いということです。そうなると、行内での高い評価を得たい銀行の営業マンは借り手に「ローンを借りている期間の金利は低くて良いので、その代わりに最初に貰う手数料を少し多めにください」というお願いをすることでしょう。そうして実行されたローンを担保とした証券を発行しようとしても、ローンを貸している期間(=期中)の金利が低いので、その証券化商品の利回りは低く、そのような商品を買う投資家が現れる見込みがありません。ゆえに証券化されません。そのようなことで、証券化できないローンが積みあがっているのだそうです。(もちろん銀行はアセットを使いたいので積極的に証券化するニーズがないという理由もあります)


その話を聞いて、以前勤めていた銀行で、支店からずいぶん離れた場所にある企業と小額融資の取引がある現象と同じだと感じました。中小企業融資額の増加という銀行の経営方針に沿って立てられた個人目標=「新規融資獲得件数」という時代がその昔あり、そのときに営業マンたちは収益性や効率性には目をつぶり、新規の融資獲得を目指しました。その結果として、収益性、効率性の低い取引が積みあがってしまったのでした。


上司の言うことを良く聞き、評価体系を正しく理解できる優秀な担当者がいればいるほど、目標が間違っていたときには会社は進むべき道を大きく外れてしまいます。本質的に正しく、中長期的な発展と短期的な利益を追求するための評価体系を作るのは本当に難しいなと思います。まあ、難しい難しいと言っていても何も始まらないので、まずは業務の棚卸から頑張ります(^^)