資格取得の効用

先日、米国公認会計士USCPA)資格取得学校であるU.S.エデュケーション・ネットワーク様主催のキャリアセミナーで、パネルディスカッションの進行役をつとめました。私は資格試験にチャレンジしたことはないのですが、パネラーのお三方は日本の公認会計士の方やUSCPAの科目合格の方でしたし、セミナーに参加いただいた方も会計系資格と縁の深い方々でした。ということで、USCPAの資格取得について、資格がどう仕事に活かされるのかというテーマに時間が多く割かれました。


パネラーの方々のお話で私が一番興味深かった点は、「資格の効用」です。


資格取得のきっかけと実際に取った後に実感する効用はリンクしますので、お三方の取得の経緯から効用についての考え方をご紹介します。


Aさん
就職氷河期に直面した学生時代、面接での印象如何に関わらず信頼される資格を取得したかったため公認会計士資格にチャレンジし取得。その後、アメリカで仕事をする機会があり、米国の会計に疎い自分への自信回復のためUSCPA資格の必要性を感じ取得。客観的な信頼感を得られるという点と自分自身への自信という点では大きな効果があった。


Bさん
長らく外資系金融機関で勤務したが、家族の事情により一年余りキャリアを中断。キャリア中断の最中にUSCPA試験にチャレンジし、科目合格。その後、某コンサルティング会社にディレクターとして再就職。キャリア中断期間も自己研鑽を怠らなかった点を客観的に証明することができた。


Cさん
全くビジネス経験がない中で二十代半ばからアカウンティング関連の仕事を希望。派遣社員をしながらUSCAP資格にチャレンジし二十代後半で取得。取得後は内部統制関連コンサルティングビジネスの世界へ。経験がない中でアカウンティングの仕事に関心があることを示すには、資格取得は強い説得力を持つ手段。


バックグラウンドの違いはあれ、お三方の共通する資格取得の効用は

■内面的に「自信がついた」
■対外的に「信頼感が増した」

という二点に集約されるのだろうと思います。


一方、これも三人とも声をそろえて仰っていたことが、資格取得がキャリア上のすべての問題を解決することにはならない、ということです。


資格取得の課程で得られる知識はベーシックなレベルであり、実務が始まればさらに深く学ばなければなりません。資格取得で得られた知識は必要条件であり、十分条件ではない、といえるかと思います。

また、監査やコンサルティングなどの仕事の場合、顧客とのコミュニケーション力が極めて大切な能力になります。資格取得勉強中はなかなかこのスキルは身に付きません。


自己啓発をする、資格取得を目指すということは極めて重要であり、立派であり、意味のあることです。


しかし、実際の仕事で身につける知識やスキルに勝る資格はありません(もちろん資格を取得しなければ就けない仕事は別です)。資格を取得するためにキャリアを中断し、自ら実務経験を短縮してしまうことは上記理由からなるべく回避すべきことと思います。


働きながらの資格取得は大変ですが、出来れば仕事を続けながら目指した方がベターですね。難易度の高い資格で仕事との両立が困難な場合でも長くて二年、なるべくなら一年くらいで目処をたてたほうが、結果として良いキャリアになると思います。