選択肢が多いことと満足感のパラドックス

ある年配のご婦人から「今の若い女性たちが羨ましいわ。キャリアウーマンになりたければ道は開かれているし、家庭での自己実現も選択できる。色々な選択肢の中から自分の進みたい道を選ぶことができて本当に幸せね。」と言われました。昔の女性たちは選択の余地なく、年頃になれば家庭に入ることが期待されたケースも多かったでしょうし、そういう意味では確かに今の若い女性は恵まれているのかもしれません。しかし、今の世の中には、選択肢がたくさんありすぎて選択するのに非常に苦労します。これは若い女性の人生に限ったことではありません。


キャリアカウンセリングをしていると、男女問わず、働く人の中には「本当に自分はこの仕事やこの会社が合っているのだろうか、ほかにもっと良い選択肢があるのではないか」という迷いを持っている方は非常に多いと感じます。これは電気製品を買おうと思っても、たくさんの機種が出ていて、何を基準に選んだら良いのか分からない現象とも似ています。


最近読んだ「行動経済学」(光文社新書友野典男著)で紹介されていた実験でも、50種類のジャムから1つを選んだ人と、5種類のジャムから1つを選んだ人の満足度は、5種類のジャムから1つを選んだ人のほうが高い、という結果でした。あまりに多くの選択肢から選ぶと、自分の選択に確信を持てず、後悔することが多いからだそうです。


我々人材紹介会社もやたらと多い情報をご提供するだけではキャリア選択のサポートになりません。情報があふれているこの時代だからこそ、ニーズに合わせて、情報を取捨選択してご提示することが役割だと思います。そこにプロとしての人材紹介会社の存在意義があると思っています。